糖尿病の予防
糖尿病予防の基本的な考え
糖尿病の人もそうでない人もいかに糖尿病が怖いものかということをおそらくはすでに知っていると思います。糖尿病は生活習慣病の一つとして、今現在もたくさんの人が煩い、そしてまた、患者数は増加傾向にあるそうです。糖尿病の予備軍も併せると年齢にもよりますが、半分近くの人が警戒域に達しているとする分析もあります。では、どうすれば血糖値が高くなる糖尿病や合併症を防ぐことができるのでしょうか。
糖尿病予防の基本は、なんといっても血糖コントロールです。血糖が高いときは薬を使って制御することもありますが、同時に生活習慣を見直すことも重要です。端的にいえば食事療法を守り、太らないことです。また、禁煙・禁酒または節酒をすることも効果があります。食事は肉より魚を食べることや食物繊維を取ること、野菜・海草・キノコ類がお勧めです。そして、適度な運動を定期的に行い、血圧も出来るだけ正常に保ちます。
また、常に自分の合併症の有無、程度は知っておいて下さい。定期的に検査する予定を組み、検査の時期が来れば自分で進んで検査を受けるようにしましょう。医師に頼りっぱなしというのも危険です。医療費の問題や健康保険のシステム上、医師より検査を薦めにくい場合もあります。検査の時期が来たり、何か症状があったときには自分から医師に相談するようにしましょう。
体重との関係
糖尿病というと患者は肥満な場合が多いと考えます。関係がないとはいえませんが、必ずしも患者が肥満というわけでもあります。自分が太っていないからといって、糖尿病ではないと油断していると危険なので十分注意してください。
では、糖尿病になったときはどうすればよいのか。「痩せているほうがよいに決まってるからダイエットしなきゃ」と考えるかもしれませんが、そうでもありません。要は健康体であればよいので、痩せすぎもあまりよくありません。太りすぎず、痩せすぎず、健康的に長生きできる体重をを目差します。このような体重を標準体重といいます。また、この標準体重を維持できるような食生活が健康的な食生活というふうに考えます。
特に危険なのは、急激に体重をコントロールしようとすることです。血糖が上がらないようにと考え、血糖を下げる薬を使いながら極端にカロリーの少ない食事を維持すると、低血糖状態となり、重篤な副作用を招く危険性もあります。体重が重すぎる人も、月に1キロ程度でよいので、徐々に落としていくことを考えましょう。
糖尿病性腎疾患が進行すると、全身に老廃物がたまり、むくみが生じたり一時的に体重が微増することもあります。
糖尿病の自覚症状
糖尿病は、検査をしないとなかなか気づきにくいものです。そして、気づいたときにはもう手遅れという場合も少なくありません。大人の糖尿病の場合は初期に自覚症状がないか、あっても軽い場合が多くほとんどの方が気づきません。ちょっとした疑いがあっても自ら検査を受けるという人はあまり多くないようです。職場で健康診断を行っている人の場合はまだよいのですが、そういった機会をもたない人は特に注意が必要です。
自覚できる症状としては以下のようなものがあります。
・手足の先がしびれたり違和感がある
・胃や腸の調子がおかしい
・歩くと足の裏に痛みがある。
・のどが乾きやすい
・トイレに行く回数が多い
・傷が治りにくく化膿する
・皮膚にかゆみがある
・四肢の先端に冷感または熱感がある
無論、上記の条件にあてはまるからといって、確実に糖尿病であるというわけではありませんが、よく当てはまるという人は糖尿病の危険度が高い人です。一度病院で検査されることをお勧めします。
老化や更年期障害と間違いやすいところもあるのですが、糖尿病で自覚しやすいのは主に高血糖による神経障害と高血圧による血管系の障害です。心当たりがあるかどうか探ってみてください。
血糖値のコントロール
さて、なにはともあれ糖尿病の治療として、最も重要かつ効果的なのは血糖値のコントロールです。ただ、その具体的な方法は個人個人によって最適な方法が違ってきますので注意してください。
血糖値のコントロールというと常に血糖値を一定に保たなくてはならないと考えるかもしれませんが、そうではありません。実は血糖値というのは食後はもちろんのこと、気持ちが興奮するような出来事があったり運動後などに多少は変動しているものです。したがって、いつどのくらいということを計っても、実際にはあまり意味がない場合もあります。
時間帯によっても違いますし、そのときの精神状況、起きたばかりなのか、体調、いろいろなものが血糖値には影響してきます。
血糖値を毎日計ること自体はよいのですが、計る時間状況などをなるべく同じにする必要があります。そして、日々の変化を厳密に比較して一喜一憂しないことです。糖尿病は急に良くなることもありませんし、よほどのことが無い限り急激に悪くなることもありません。
血糖値よりも糖尿病の進行度を測りやすいものとして、グリコHbA1cという指標があります。次は、こちらの説明をしていきます。
グリコHbA1cとは
現在糖尿病と闘病中のかたはご存知のはずですが、グリコHbA1cという指標があります。グリコHbA1cは、現在保険診療上、月に一回の測定が認められているものです。何故月にたった一度でいいのかというのは、この検査の性質にかかわっています。
グリコHbA1cは、端的にいってしまえば血糖値の30~50日の変動を反映している指標と考えられているものです。これを計るだけで、およそ過去一ヶ月間の高血糖状況が一目瞭然というわけです。糖尿病患者にとっては、一ヶ月に一度の定期テストみたいなものなのです。この数値によって糖尿病の進行度や合併症のリスクをおよそ見通すことができます。
瞬間的な血糖値を日々計測するよりは、効率的で合併症の予防のうえでも一般に広く使われている役に立つ測定方法です。
グリコHbA1cの単位はパーセントで表します。正常値は、およそ5.8%以下といわれており、患者各々によって目標値はことなりますが、およそ7%以下をキープすることが糖尿病患者にとっては好ましい数値といわれています。
特に厳密に考える必要はありませんが、とにかくこの数値の変化には注意すべきです。8パーセントだったのが9パーセントになったりと、数値が悪化した場合には血糖値のコントロールがうまくいっていないことを意味します。8パーセントそのままであればとりあえずは悪化していないのでその調子で努力を怠らないようにしてください。
グリコHbA1cの特徴
グリコHbA1cは糖尿病治療をするうえで、もっとも注意しなければならない数値だといえるでしょう。患者によってまちまちですが、合併症が発症する割合もグリコHbA1cの数値でかなり変わってくると考えられています。統計をとってみるとグリコHbA1cが7%を超えると、急激に合併症発症リスクが高くなるようです。まずは一ヶ月に一度のグリコHbA1cで数値が改善することを目標に治療に励んでください。
およその血糖値の一ヶ月の平均値を反映していると説明しましたが、ただし、厳密にいうとそうではありません。血糖値は健康な人でも数値に変動が見られます。
しかし、糖尿病の人は一般に耐糖能が欠如しているのでこの変動が激しいのです。さて、糖尿病の人のなかにも血糖値の変動が激しい人とそうでない人がいます。この人たちのグリコHbA1cの数値を比べると、血糖値の平均は同じくらいであっても、変動の激しい人のほうがグリコHbA1cの数値が高いことがわかっています。変動が激しいと合併症の発症率が高くなってしまうので、したがってこういった意味でもグリコHbA1cは合併症のリスクをよく反映しているものだといえます。
血糖コントロールはその数値の高いか低いかだけでなく、変動を抑えることも重要になってきます。変動を抑えられていれば自然とグリコHbA1cも下がるということになります。
インスリン分泌不全
糖尿病と関連の深いインスリンについては、すでにご存知だと思います。膵臓から分泌されているインスリンが働くことによって、血液中のブドウ糖が栄養分として各臓器細胞に届けられエネルギー源として働きます。糖尿病の方は、個人差がありますがインスリンの分泌が悪くなっていることが多いのです。では、具体的にインスリンの分泌が悪くなるということはどういうことなのでしょうか。
通常、食後には血液中のブドウ糖の量、すなわち血糖値が上昇します。健康な人は、食後すぐに大量のインスリンが分泌されるために血液中のブドウ糖は全身の各細胞にすばやく届けられ、比較的短い時間で血糖値が正常値まで落ち着きます。
一方、糖尿病の方は食後に血糖値が上昇すること、その上昇の仕方は変わらない場合が多いのですが、インスリンの分泌が不十分なため、血糖値が上がったままでなかなか正常値に戻りません。このような状態をインスリン分泌不全といい、糖尿病の一つのタイプです。
インスリン分泌不全にも程度の差があります。糖尿病に対してなにも予防行為をしていないと進行する場合があるので十分な注意が必要です。進行するとインスリンがほとんど分泌されなくなる場合もあります。
しかし、このようなインスリン分泌不全の方だけが糖尿病と呼ばれているわけではありません。他にもいろいろな糖尿病のタイプがあります。
インスリン抵抗性
糖尿病、または糖尿病予備群にはさまざまなタイプがあり、そのなかにはインスリン分泌不全があることを説明しました。それ以外のタイプで「インスリン抵抗性」というものが知られています。インスリン抵抗性の患者は、インスリンは分泌されているのにしっかりと働いていない状態が続きます。このタイプは、運動不足だったり、だんだんと肥満があらわれたりする人に多いといわれています。
インスリンは通常ブドウ糖にくっついて、各細胞に届けられます。しかし、全身の細胞にインスリンが取り込まれにくい形になっていると、インスリンが正常に働かなくなってしまうことがあるのです。こういった状態をインスリン抵抗性と呼びます。
この患者では、十分にインスリンが分泌されているにも関わらず、さらに脳からインスリンの分泌命令がだされるため、健常者よりもインスリン量が多く検出されることがあります。この状態を高インスリン血症といい、心筋梗塞の原因になることもあるといわれています。
インスリン抵抗性を予防するには、運動とダイエットが効果的だと言われています。また、それ以外にもインスリンが細胞に取り込まれやすくするための薬が近年では開発されています。その薬を服用して治療する場合があります。
低血糖
糖尿病は高血糖と関わりが深い病です。しかし、治療中の人は低血糖にも気をつけなくてはなりません。低血糖というのは血糖値が60mg/dl以下(または50mg/dl以下)になった状態のことをいいます。ただし、普段の血糖値がもともと高い人が急に血糖値が下がった場合には、100mg/dl程度でも低血糖と同じような症状が出ることがあるので注意が必要です。
低血糖になると、異常な空腹感・脱力感・冷汗・手指のふるえ・動悸などがなんの前触れもなく現われます。これらの症状は糖が含まれるものを食べるなどして血糖を上げることによりすぐに無くなります。しかし、低血糖状態が長時間つづいたり、あまりにも過度な低血糖の場合は、意識を失い命の危険が伴う場合もあるので油断は禁物です。
糖尿病の人は、血糖コントロールをしているために、薬や食事制限などで無理矢理血糖を下げてい場合があります。このようなとき、食事量が極端に少なかったり、食事時間が遅れる、また、いつも決められている間食を食べなかったときなどに低血糖に陥りやすくなります。また、激しい運動を行ったときもそのような症状に陥ることがあります。
それ以外に、自己判断で薬などによりインスリン量増やしたときに生じます。
低血糖の予防
血糖コントロールは、単に血糖値をさげればよいというものではありません。急な血糖値の低下、あるいは、血糖値の下がりすぎも避けなければなりません。食事が摂れない、あるいは食事の時間の遅れるとき、運動量が多いときなどには、低血糖が起こる可能性が高くなるので、補食としてビスケット、クラッカー、果物などを手元に用意しておくとよいでしょう。
もしも、予防が上手くいかずに低血糖症状を感じたら、すぐにブドウ糖10gまたは砂糖10~20g、あるいは糖質を含むジュ-ス類適量を飲んで下さい。そして、血糖値が測定出来るようなときは、測定しておくとよいでしょう。
血糖コントロールをしている方で、低血糖が心配な人は砂糖やブドウ糖をすぐに取り出せるところに置いておくとよいでしょう。車の運転中などは特に注意が必要です。少しでも異変を感じたら運転をやめ、糖質を補給するようにしましょう。
お菓子類は、血糖がすぐに吸収されにくい場合もあるので、できるだけ糖質を含んだ飲み物がよいとされています。ブドウ糖そのものや砂糖も効果的です。
