糖尿病の合併症
糖尿病の合併症とは
糖尿病は定期的な検診を行っていないとなかなか発見しにくい病です。ある意味では患者に苦痛がなくて良いことだと考えるかもしれませんが、しかしこのことこそが問題なのです。たとえば他の病気で患部に痛みを訴えるような症状があったり、熱が出て咳が出たりお腹が痛めば誰でも病院に受診するでしょう。しかし、糖尿病の場合は、症状がほとんど現われないため放置してしまうことが多いのです。
そして糖尿病が進行して、合併症による症状が現れて初めて受診される方も少なくありません。しかし、合併症が現われてしまったときには既に手遅れだったり、長期的な治療を要することがほとんどです。では、そのように恐ろしい合併症とは一体どんなものなのでしょうか。
糖尿病とは耐糖能が欠損し、血糖コントロールが不良で高血糖が続く状態のことをいいます。このような状態で体中に血糖の高い血液が流れている状態が続くと、全身を走行している血管そのものが徐々にダメージを受け、その結果として様々な臓器に異常が出現してきます。
また、高血糖による血管に与えるダメージもそうですが、高血糖そのものも場合によっては体内の絶妙なバランスを保っている機構を壊す結果となり、死につながるような症状を引き起こす原因になります。
以上のようなものを合わせて糖尿病性合併症と呼んでいます。
糖尿病の主な合併症
糖尿病の合併症にはさまざまなものがあります。一般的に症状は重く、治りにくいやっかいなものなので糖尿病になってしまったときには十分な警戒が必要です。
もっともかかりやすい合併症として三大合併症というものがあります。三大合併症というのは、糖尿病性腎症、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経症のことを指します。しかし実際にはこれ以外にの合併症にかかることも多いのです。いわゆる動脈硬化系の疾患が多く、心筋梗塞や脳卒中、糖尿病性壊疸などほかの生活習慣病の原因となってしまうことがあります。さらに糖尿病が悪化すると抵抗力が弱まり感染症を受けやすくなるので、感染症も一つの合併症と言えるでしょう。
さて、ではどの程度糖尿病が進行すると合併症にかかりやすくなるのでしょうか。それには個人差が有りますが、一般的には糖尿病になってから10~30年後に種々の合併症の症状が出始めると言われています。このときにはすでに生活に大きな支障が出てくることが多いようです。当たり前かもしれませんが、血糖値の高い人ほど早く合併症が出てくるといえます。だからこそ、合併症を起こさないように、早い時期から治療に専念し合併症を警戒していく必要があるのです。
糖尿病の自覚症状
糖尿病というのは文字通り、尿に糖が混ざるほど糖の代謝がうまくいっていない状態のことを指します。当然血液中の糖分、血糖値が高くなることも同時に意味しますが、しかし、ではなぜ血糖値が上がるのは体に良くないのでしょうか?
実は担当の医師や栄養士、指導員など病院のスタッフが懸命に糖尿病の患者さんを支え、治療をサポートしていくのはすべて合併症を予防するためなのです。糖尿病の治療は、血糖をコントロールしながら、定期的な検診を行ったり、規則正しい食事や適度な運動を心掛けたりあるいはインスリン注射を行ったりしますが、これらは合併症を予防するために行っているのです。
糖尿病自体には、実はほとんど自覚症状がないのです。逆にいえば、自覚症状がないことが糖尿病の特徴と言ってもよいでしょう。もしあったとしても多尿があったり、口渇のため良く水を飲むなどなかなか気づきにくい軽いものです。手足のしびれや冷感を初期症状として考えることもできますが、しかしこれらの症状は正確には「糖尿病性神経症」という合併症の初期症状です。したがって、すでに糖尿病がかなり進行してしまっている状態だといえます。いずれにしても、糖尿病それ自体に本人が激しい苦痛を訴えるような症状はまずありません。
他の生活習慣病との関わり
糖尿病は生活習慣病の一種です。生活習慣病の患者とともに糖尿病患者は増え続けているという話が実際にあり、増加の傾向は今後も続くといわれています。また、すでにお話ししたとおり、糖尿病はほかの生活習慣病をより憎悪することが多いために余計に注意が必要です。
さて、糖尿病になると血糖が上がるほか、血液がドロドロの粘性の高いものとなるため、高血圧や高脂血症をまねくことが少なくありません。このような症状合併した人に多く見られる合併症としては、心臓の血管(冠動脈)が動脈硬化を起こして狭くなる(狭心症)詰まる(心筋梗塞)といったものが考えられます。これは急にくることが多く、実際に糖尿病で血糖値が特に高い人では発作中も胸の痛みが無い場合があります。ほかに脳の動脈が硬く・もろくなって詰まったり(脳梗塞)、破れたり(脳出血)することがあります。
また、高血糖や高脂血症の場合は閉塞性動脈硬化症も心配です。これは足へ行く動脈が動脈硬化などで細くなり、高血糖プラス高脂血症でさらに血流が悪くなり慢性的な血流不足となるものです。最悪、糖尿病性壊疽という足先などが腐ってしまうこともあるので注意が必要です。
一方、血糖コントロールが特に悪いという方に見られる合併症としては、肺炎、腎盂腎炎、壊疽、皮膚膿瘍、結核など各種感染症が挙げられます。
糖尿病と動脈硬化
糖尿病は、血糖値が過剰に上がることによって、血管そのものを毀損してきます。したがってこの結果、健常者でも加齢とともに徐々に進行してくる動脈硬化が、健常者よりも速く進んでしまうということになります。一説には、糖尿病患者は一般の人よりも10年早く動脈硬化が進むとも言われています。
ところで、動脈硬化とは一体何なんでしょうか。動脈硬化というのは、水道パイプが長年の使用とともに不純物によって徐々に詰まってくるのと同様に、血管の内側にコレステロールなどの異物がたまり、徐々に血管内腔が狭くなってくることをいいます。また、血管自体が弾力を失い卵の殻のように硬くなってくるのです。
本来、動物の体のなかにある動脈の内側というのは表面がスムースで、血管自体にも弾力があるのですが、動脈硬化が進行するとこれらの特徴がだんだんと失われていってしまうのです。
動脈硬化があると血管自体に狭窄があるため、血流に障害をきし、血管の形状が変形してしまうことがあります。あるいは血流障害によって渦ができ、血栓状になることもあります。もしこの血栓が血液の流れに乗って、身体内部のどこか別の場所へ流れていくと、その場所で血管がつまってしまう可能性もあります。実際に脳梗塞などはそういった理由で引き起こされることが多いのです。
糖尿病の動脈硬化具体例
糖尿病は一般の人よりも、動脈硬化が起こりやすくさまざまな疾病の原因となることを説明致しましたが、では、そのような動脈硬化によってどんな疾患が生じてくるのでしょうか。動脈は人間の体内になるあらゆる臓器に血液を供給しているパイプのようなもので、したがって、いろいろな箇所で障害が起こってきます。
最もメジャーなものとしては、心臓に血液を供給している冠動脈が詰まり、閉塞して起こる「心筋梗塞」、または狭くなって起こる「狭心症」があります。また、脳の血管は微細で詰まりやすくまた破れやすいです。したがって、脳に血液を供給している血管が詰まって起こる「脳梗塞」、あるいは血管が破れてそこから出血することによって起こる「脳出血」の発症頻度も少なくありません。
それ以外に、下半身へ流れる血管が詰まったりする閉塞性動脈硬化症、あるいは動脈硬化によって比較的太い重要な動脈の血管壁が裂けてそのなかに血液が流れ込むんでしまう解離性大動脈瘤などがあります。
以上のような動脈硬化による疾病は、いずれも重篤な疾患で死に直結することもある危険なものです。
糖尿病の合併症は、これら動脈硬化に直接関係するものもあれば、それ以外に糖尿病特有の合併症と考えられているものもあります。
糖尿病固有の合併症
糖尿病の合併症は、動脈硬化との関係で引き起こされるものも少なくありません。はっきりいって、厳密な意味で動脈硬化と関係のない合併症はありませんが、糖尿病でないと起こりにくい合併症は、糖尿病固有の合併症と考えられ、診察・治療していくこととなります。
糖尿病固有の合併症は高血糖が原因で、主に細い血管である毛細血管が詰まって起こります。いずれも、長期間糖尿病を患っていて、特に血糖コントロールの悪い人に起こりやすいものです。これらの疾患は最初ははっきりとした自覚症状をもたないのが通例で、気づいたときには症状がかなり進んでいることが多いので、予防のためには最低半年に一度は検査を受けるとよいでしょう。
糖尿病の怖い合併症として目の病気が広く知られています。これは正式には糖尿病網膜症というもので、原理としては眼底の血管に病変が起こって、症状が進行してひどくなると失明する場合もあります。実は目が見えにくくなったときには、やや手遅れともいわれており大変怖い疾病です。糖尿病初期から常に警戒して、定期的に眼科の検査を受けるようにしましょう。
糖尿病の合併症には目の疾患以外にもさまざまな合併症が考えられます。
糖尿病固有の合併症具体例
糖尿病の合併症とは、すでに説明してきたとおり、主に動脈硬化と関係して起こるものだといえます。糖尿病患者は一般の人よりも動脈硬化が進む可能性がただでさえ高いということができます。したがって、動脈硬化によって起こる疾患を糖尿病の合併症ということもできますが、それ以外に、主に高血糖を理由に発症される合併症があります。これを糖尿病固有の合併症と考えることとします。
例えば、糖尿病腎症というものがあります。これは高血糖によって腎臓に障害が起こり、徐々に機能がむしばまれていく病です。高血糖による内臓疾患の一つです。この疾患の当初は、尿検査で蛋白尿やむくみが出てきます。しかしこれが徐々に進行していくと、一時的な腎障害となり、慢性腎障害となり、全身にむくみができるなどさまざまな症状が出てきます。そしてやがて透析を必要とする場合もあるやっかいな病状です。
また、糖尿病神経障害というものがあります。これは全身の神経そのものが障害されてしまうものです。最初は普通は足先のしびれ、痛みといった症状として始まります。徐々にひどくなっていくと歩行困難になることもあり、足の神経が麻痺して感覚がなくなり、糖尿病性壊疽といって下肢の一部が腐った状態になることもあります。糖尿病にかかったら足の状態にも十分気をつけるようにしてください。
さらに、胃腸や心肺の動きを調節する自律神経が侵されることによって、便秘・不整脈・下痢などの体調不良として現われることもあります。
糖尿病性神経症~感覚神経など~
糖尿病が進行するとかなり多くの方が糖尿病性神経症で悩んでいる実態があるようです。糖尿病性神経症の初期は、多くの場合は末梢神経への影響が現れてきます。手足がしびれる、虫がはっているような違和感がある、なにも触っていないのになにかに触れているような感覚があるなどと訴えられる人が多いようです。このような感覚は糖尿病性神経症という血糖が高いために神経が犯されている病気に起因しているのです。
このような自覚症状は深部知覚と呼ばれる箇所の神経障害によって引き起こされます。最初のうちは無自覚か自覚できたとしても多少の違和感で済むのですが、これが進んでくると徐々に違和感が強くなります。具体的には、過敏になって些細なことで痛みを感じたりすることもありますが、逆に足に傷を負っても痛みを感じない、熱さがわからなくて熱湯につかり全身やけどをするといった無感覚に陥る例もあります。このように進行すると大変危険な症状です。
以上のようなものも糖尿病性神経症といえるものです。ただ、神経というと知覚や運動を司っている感覚神経や運動神経のみが考えられがちですが、われわれの知らない所で自然に体をコントロールしている自律神経なども侵されてきます。
次はそういった症例について説明していきます。
糖尿病性神経症~自律神経~
神経には意識的なコントロールを要する求心性神経(感覚神経)や遠心性神経(運動神経)ばかりではなく、無意識的に働いている自律神経というものがあります。
人間は緊張状態にあるときとリラックス状態で、見た目には現われにくく違いはないように見えるかもしれませんが、実は見えないところでは大きな差異が確認出来ます。例えば夜に眠っているときは、呼吸と脈はゆっくりとして落ち着いています。逆に、人と言い争っているようなときは呼吸は荒くなり脈拍と血圧があがります。
このように、人はその自律神経によって種々の臓器や器官の働きを調節してそのときの環境に適応しているのです。ところが、糖尿病で血糖コントロールがうまくいかない状態が続くと、この自律神経にも影響してきます。
例えば、胃腸機能の調節は自律神経が行っているものなので、糖尿病によって障害されると消化・吸収・排泄のいずれかに支障が生じ、下痢や便秘症などとして現われます。あるいは、血圧のコントロールも自律神経が行っているので、これが狂うと立ちくらみやめまいなどの原因となります。また、排尿・性的機能のコントロールを失い、失禁やEDなどが引き起こされることもあります。
このように糖尿病性神経症が自律神経に左右すると、ただちに命にかかわるといったことはありませんが、生活するうえでの色々なシチュエーションで支障が出てくるのです。
