糖尿病の治療
糖尿病の治療とは
糖尿病の治療の基本は、食事療法・運動療法・薬物療法の3つだといえます。生活習慣病の一種なので、日頃の生活習慣などを全体的に見直す必要があるのです。食事療法は別のところでも詳しく説明していますが、基本的には無理な暴飲暴食をやめて、健康的な食生活を目指すということになります。
糖尿病の疑いがある人は、糖負荷試験などの精密検査を受けることになります。検査では、インスリンの分泌量やインスリンを分泌する膵臓の疲労度などを調べます。栄養指導を受けるときには、このような検査結果と照らし合わせて指導を受けることになります。肥満があれば解消するように、運動ができる状態かそうでないかなども考えながら、生活態度を全般的に見直していきます。
治療には患者の協力と努力が不可欠です。また、糖尿病に冠する知識に欠けていると誤った治療を行い、回復が遠ざかり病気の進行を早めてしまうことがありますので、十分な理解が必要だといえます。基本的には医師の指導に従っていればよいのですが、それだけでは不十分だといえるでしょう。医師に言われないところでも、糖尿病治療に役立つ正しい知識を得ることが治療に際して最も重要なことだといえるのかもしれません。
糖尿病の原因
糖尿病の原因を突き止めることは簡単なことではありません。ほかの生活習慣病と同じく、言ってしまえば長年の積み重ねによって起きてくるものが多いといえますが、必ずしもそうだといえないこともあります。
実は、日本人の糖尿病患者のほとんどは、遺伝的素因をもっていることがわかっています。つまり血縁者に糖尿病の人がいれば、糖尿病になりやすい素因がある可能性が高いのです。遺伝的素因があるからといって、必ず糖尿病になるわけではありませんが、十分に注意して健康的な生活を営むことを心掛けなければなりません。
ただし、こういう日本人に多い遺伝型の糖尿病のみでなく、遺伝とは全く関係していない糖尿病も存在します。この糖尿病では普段の生活習慣の積み重ねにより糖尿病が引き起こされているもので、偏った食生活をしている、運動が極端に不足している、喫煙・飲酒が激しい、ストレスが多いなど、いわゆる荒れた生活をしている人に多いものです。
実際には、療法の原因が複合的に起こされているものですが、どちらかの原因に偏っていると判断できる場合に、先天的糖尿病と後天的糖尿病に区別されることがあるのです。いずれにしろ、インスリン分泌不全かインスリン抵抗性のどちらかという意味では、インスリンの不調に関わっている病気であることには間違いありません。
糖尿病治療の目的
糖尿病の治療は、いろいろな方法がありますが目的は一つです。患者さんが健康で長生きできるようにすることが最大の目標です。たとえば、薬で無理に一時的な血糖コントロールを行っても、患者さんによっては長期的に考えると、望ましい治療だとはいえない場合があります。このように短期的な効果だけでなく、長期的な視野に立って医師とともに患者も治療に望む必要があります。
糖尿病はすぐに治るような病気ではありません。長年の積み重ねで引き起こされたものなので、通常は長期的な治療によって徐々に回復すればよく、症状の進行を食い止めることが精一杯という場合も少なくないでしょう。
したがって、言ってしまえば糖尿病が進行する前の早期発見・早期治療が最も重要です。また、一度改善したからといって、すぐに治療をやめてしまうのも考え物です。完治との診断後も定期的な検診は欠かさないほうがよいでしょう。
と、ここまで言ってきたことに間違いはありませんが、糖尿病という血糖値が高くなる症状それ自体は、ただちに重篤な症状を引き起こすというわけではありません。人の血糖値はもともと上下しているものなので、少しの間血糖が高くなったとしても問題はないのです。糖尿病で怖いのは、長期的に血糖コントロールが上手くいかなかったときに引き起こされる「合併症」です。合併症を防ぐことが治療の具体的な目的であるといってもよいでしょう。
インスリンとは
糖尿病はインスリンの分泌不全や機能不全に関わる疾病です。ではインスリンとはそもそもなんなのでしょうか。治療でインスリン注射を使う場合があります。これはインスリンの分泌が足りないために、血糖コントロールができないので、注射でインスリンを補っているものです。しかし勘違いしてはならないのは、インスリンが足りないということが、すなわち糖尿病ということではないということです。
インスリンを打つのは、血糖値をコントロールするためです。糖尿病には様々なタイプがあり、患者さんの進行度の差もあるので、必ずしも糖尿病だからといってインスリン注射をするというわけではありません。血糖値のコントロールが重要なので、ほかの方法で血糖コントロールができる場合はインスリン注射は行いません。
本来、人間のインスリン分泌の目的は、大きく分けて二種類あるといわれています。一つは、食事と直接関係なく分泌されている肝臓や体内での糖代謝を助けている基礎分泌、もう一つは食事摂取後の急激な血糖上昇に対応するための追加分泌です。どちらがかけても体に重大な負担がかかり、それぞれが重要な役割を持っています。ちなみに、日本人の多くの糖尿病患者さんは、後者の追加分泌に問題が生じていることが多いといわれています。
したがって、インスリン注射といっても、患者さんの症状に合わせて使う必要がでてきます。
インスリンの種類
糖尿病治療に使用するインスリンは、一種類しかないわけではありません。インスリン注射にはいくつかの種類があります。それぞれのインスリン注射によって、作用発現までにどのくらいかかるか、また、その効果がどれくらい持続するかということが違っています。これらの特徴をきちんと考えた上で、患者さんにあったインスリン注射の使い方を医師は指導してくれるはずです。したがって、自己判断で勝手な使い方をするのは禁物です。
インスリン注射といっても、なにか特別な役割があるというわけではなく、結局は健康な人と同じようにインスリンが働くことを目指しているのです。インスリン注射に種類がいくつかあるといってもどのように作用するかが違うのであって、目的は同じです。
通常、生体内で食後に分泌される追加分泌のインスリンは、とても短い時間で大量に血液中に分泌されます。つまりは間食を含めて食事をしたときはそのたびに体内で大量のインスリンが使われているということを意味します。この事実は、糖尿病治療を続けるうえではよく認識しておくべきことの一つです。この追加分泌を再現するためには超速効型インスリン注射を用います。
それ以外に、基礎分泌にあたる持続型のインスリンを組み合わせてインスリン療法を行うのが一般的な方法になっています。
糖尿病と空腹感
糖尿病というと太っている人がなるというイメージがあります。完全にそうとはいえませんが、それでも糖尿病の人はカロリーを過剰に摂取している場合が少なくありません。カロリーを過剰に摂取しているから糖尿病となってしまうのか、糖尿病になってしまったからカロリーを過剰に摂取してしまうことになるのか、実はどちらともいえないことがあります。
糖尿病の場合、インスリンの分泌が足りないかインスリンが十分に働いていないため、患者が慢性的な空腹感を訴えるケースが少なくありません。というのもインスリンはブドウ糖を細胞に届ける働きをしているため、食事を摂ってもインスリンの作用が十分でないと栄養分が足りない、すなわち飢餓状態として脳に認識されてしまうことがあります。こうなると食事量が多くなってしまい、血糖値がさらに上昇することに繋がり悪循環が引き起こされてしまうのです。
インスリン治療を受けると、通常はこの空腹感は次第に軽減されていきます。インスリン注射は患者にとって負担が少ないものではありませんが、一面では患者を助けてくれる効果の大きい、有用な治療法だといえます。また、将来的にはより負担の少ない注射方法などが開発されると考えられています。
糖尿病と脱水症状
糖尿病患者は、水分摂取に関連して、少し不可思議な症状が現われることがあります。たとえば、水をたくさん飲んでいるのに喉が渇く、あるいは、尿が近いのに脱水症状があるなどです。脱水症状というと単に体内の水分が足りていない状態というイメージがあるかもしれません。しかし、糖尿病の場合はそう単純でなく、水分が足りていないというよりは、血糖が上昇しているため、血液の浸透圧に問題が生じてくるのです。
高血糖状態になると血液中の浸透圧が上昇します。すると周囲の細胞から水分を引き込むように作用してしまうのです。細胞から水分が奪われると細胞内と細胞外のナトリウムやカリウム、カルシウムなどの電解質のバランスが崩れることになります。すると体内の水分量は足りていても脱水症状と同じような症状が引き起こされてしまうのです。
言ってみれば、一般の脱水症状は体全体の水不足ということになりますが、糖尿病の脱水症状は細胞内の水不足なのです。
さて、それではこのような状態を解消するためにはどうしたらよいのでしょう。それは水分を摂るというよりは、血糖コントロールをきちんと行うということが重要になってきます。血糖コントロールがうまくできていれば次第に脱水症状を自覚することはなくなっていくでしょう。
糖尿病=尿糖?
さて、糖尿病とは名前はどこからきたのでしょう。糖尿病の患者は、尿中に糖が含まれるからでしょうか。実は、あながちそうとはいえないところがあります。糖尿病というとその名称から、尿に糖が含まれている病気と考えがちで、なかには尿検査で糖がでなければ糖尿病でないと考えるひともいるそうです。それは事実ではありません。しかし、だからといって尿糖と糖尿病が無関係であるともいえないのです。
糖尿病の患者は尿に糖が出やすい傾向があります。血糖があまりにも高いと尿に糖が混ざってしまいます。したがって、糖尿病が尿検査によって発見されることもあります。しかし、尿に糖がでたからといって必ずしも糖尿病だとは限りません。
尿に糖がでやすい先天性の遺伝的素因をもっている人がいます。この人は、血糖が正常の範囲内であっても尿に糖がでる可能性があります。また逆に、血糖が高くても尿に糖が全く出ない体質の人もいます。この人は血糖が高くても、すなわち糖尿病であったとしても尿に糖がでない可能性があります。
あくまでも尿検査は糖尿病の検査ではないということを認識する必要があります。糖尿病は耐糖能検査によって、初めて診断することができるのです。
運動療法
糖尿病の基礎的な治療方法として、薬物療法と食事療法のほかに運動療法があります。運動療法においても、とにかく糖尿病治療は焦らないことです。運動はある意味では薬と同じと考えることができます。急に激しく運動すると低血糖を招く可能性がありますので、運動する時間と運動する量は毎日一定になるように心掛けましょう。毎日少しずつで良いのでコツコツと続けます。
職業や年齢、性別によっても違ってきますが、食後すぐはさけ、食事のまえもなるべく避けたほうがよいので、食後1~3時間後に、ウォーキングなどの軽い有酸素運動を30分程度続けるのがよいとされています。
すでに合併症などの危険な症状をもっている人は、運動するときも注意が必要です。また、十分な食事をとっていないと低血糖状態になる可能性があるので、食事内容にも気をつけてください。年配の人はひざなどに負担がかからないような運動にし、階段を使ったりスピードの速いジョギングは避けたほうがよいでしょう。
ダイエットしているときのように、運動療法でカロリー計算などをする必要は、特にありません。糖尿病治療の目的はカロリーを消費することではなく、インスリンの働きを正常にすることにあります。痩せるために行っているダイエットとは、目的が違うので注意してください。
運動療法の注意点
運動療法の主眼は、インスリンの働きを正常に近づけることにあります。インスリン抵抗性の人は特に、インスリンが分泌されているにも関わらず、うまく使われないために血糖があがってしまっていますが、実際に運動療法を続けていると、運動後の血糖値の下がり方が顕著になることがあります。これはインスリンがよく作用するようになったため、同じ運動であっても血糖が多く使われるようになっているためです。
このような効果を十分に実感するためには、運動の仕方に気をつけなくてはなりません。運動療法でおすすめできるのは有酸素運動です。筋力トレーニングなどは逆にカラダに負担がかかって病状を悪化させることにもなりかねないので注意してください。ゴルフや野球など、部分的・瞬発的な動きを主にした運動は、必ずしも運動療法と同じ効果を得られるとは限りません。余り激しくない強度で全身を使うような運動がベストです。そういった意味では、正しいフォームで行うウォーキングが最も理想的だといえます。他にも水泳や軽いエアロビクスなんてのもよい運動だといえるでしょう。
それから運動療法を始めるときは、病院の医師と相談してからにしましょう。患者の状態によっては、運動をするとリスクの多い場合があります。そのようなときは、まずはほかの療法で症状が改善されてから運動療法を始めることになります。
