糖尿病の食事療法
糖尿病の基礎的な食事制限
糖尿病の患者には食事制限が必要といわれています。では、具体的にどんな食生活を心がければいいのでしょうか。実は、過度の食事制限はリバウンドを招いたり、別の意味での体調不良をまねくこともあるので、注意が必要です。やはり、最低限の栄養分を取れるように工夫する必要があるのです。
糖尿病だからといって、特別に考える必要はありません。目標としては、健康な人が一番長生き出来るような食事を目指します。その人の身長に合わせた理想的な体型で、健康に長生きできる体重を維持できるようなカロリー摂取を保ちながら、バランスよく栄養をとることが重要です。
また、糖尿病の人では、なるべく毎日同じくらいのカロリー摂取となるよう努力をすることが重要です。そして、1日の必要量を3回以上に配分し、食事は、朝・昼・夕・間食といった具合に少しずつ分けて食べるのが理想的だといえます。
さまざまなケースが考えられますが、激しいスポーツやきつい肉体労働をしているといった場合でないかぎりは、一般的には朝食・昼食・夕食のカロリー摂取量はそれぞれ1:1:1.2程度が適当だとされています。また、間食をする場合は、毎日摂る時間を決めて、なおかつ一回に100Kcal程度を1~2回までに抑えておいたほうがよいでしょう。
理想的な摂取カロリー
糖尿病患者は血糖が上がりやすいため、カロリーを摂りすぎないように食事を毎食毎に気をつけながら食べる必要があります。ただし、あまりにも警戒するばかりに必要な栄養素を摂取できないとなると本末転倒です。あるいは、急激に食事を減らすとリバウンド減少で逆に太りやすい体質になってしまうといったことも考えられます。やはり適度な量というのをそれぞれが見つけていく必要があるといえます。
では、個人個人の必要なカロリー摂取量の目安は一体どうすればわかるのでしょうか。
まずは、理想の体重はいくらくらいかということを考えてみましょう。言ってしまえば、理想の体重を維持できるような摂取カロリーが望ましいカロリー摂取量と言うことができます。
医療の世界では標準体重と呼ばれるものがあります。標準体重とは、健康的に長寿をめざせる理想の体重という意味です。それは、個人個人の身長によって違ってきます。標準体重を求める式は、
「標準体重=身長(m)×身長(m)×22」
と端的に表すことができます。これはだいたいの目安で、厳密に考える必要はあります。また、この標準体重から、一日に必要な標準的なカロリーを知ることができます。一日に必要な標準的なカロリーを求める式は、
「1日に必要な標準的カロリー(Kcal)=標準体重×30Kcal」
ということになります。ただし、スポーツや肉体労働している人は「×35Kcal」で計算してください。また、栄養バランスも重要です。
血糖値が上がるのはなぜ?
さて、それでは一体なぜもって糖尿病の予防や改善に食事制限が必要なのでしょうか。食べ過ぎたら、血糖値が高くなるからでは?と考えるのが普通です。それもそのはず、実際に食事を不必要に食べ過ぎると血糖値が上がる原因となってしまいます。では、それは一体なぜなのでしょうか。食事をして血糖値が上がる体の仕組みというものを考えてみましょう。
インスリンの役割については皆さんはすでにご存知だとおもいます。糖をエネルギーに変えるときなどにインスリンが働くということでした。また、糖尿病すなわち耐糖能に異常のある人は、インスリンの分泌不足、あるいは量の不足、またはうまく作用していない状態であるとされています。
仮に、今インスリンの分泌の悪いタイプの糖尿病にかかっている患者さんがいたとしましょう。実際に糖尿病は、このタイプが多いのです。
たとえば平均的なスピードで、15分間で朝食を平らげ、800カロリーの物を食べたとします。そうすると、食事が吸収されていき、どんどんと血糖値が上がっていきます。普通は食事直後にインスリンが分泌され、働き始めるため血糖値は食後も大きくあがることはありません。しかし、インスリンの分泌の悪いタイプの糖尿病の人は食後もかなり長時間インスリンが分泌されないままでいることがあります。したがって、血糖が下がることなくそのまま次の食事をする時間になってしまうといったことが起きるのです。
つまり、インスリンの分泌が遅れているその間は、過剰に血糖値が上がってしまうというわけです。
食事療法が必要な理由
糖尿病治療を続けるうえで、もっとも基礎的部分を担うのは食事療法だと考えられています。ほかにもさまざまな治療法がありますが、どんな場合でも食生活の改善、すなわち食事療法をやらないことはありません。
食事をすると体のなかに糖を吸収するので、血糖値が上がります。このとき糖尿病患者の場合は、インスリンの分泌や機能に問題があるので、食後に急激に血糖値が上昇しなかなか下がらない傾向があるということはすでに説明しました。
では、もしこのとにきその人にとっての必要最低限のカロリーしか摂取してなかったとすればどうでしょうか。血糖値が上がることは上がるのですが、吸収される糖の量が少ないので血糖の上昇は比較的少なく、またインスリンの分泌が遅れたとしても、大量のカロリーを摂取した場合と比べればその影響は少ないと考えられます。
また、それにもまして大切なことは正しい食事療法の食生活習慣を続けることにより、インスリン分泌に無理がなくなり(そもそも大量の糖代謝を必要としていたからこそ糖代謝不全が起きたケースも少なくありません)、インスリンの分泌不全が多少なりとも改善されるということです。反対に、食事療法を行わずにいるとますますインスリン分泌不全が悪化し、糖尿病の症状自体も重いものとなっていきます。
このように、食事療法は糖尿病の血糖コントロールにおいては、最も重要な要素だといえます。
糖尿病だと甘いものは食べられない!?
糖尿病の治療を続けるうえで、食事療法がいかに大きなウェイトを占めているのかということがだんだんと分かってきたと思います。さて、よく糖尿病の人は甘い物を"一切"食べれないと信じている人がいるようです。実際に、いわゆるケーキや和菓子のようなデザート類・甘味類を全く口にしないで生活する糖尿病患者も少なくないようです。しかし、これはある意味では正しいといえますが、完全に正しい認識とはいえません。
糖にもさまざまな種類があります。いわゆる砂糖はショ糖の固まりであり、吸収が早いので血糖値への影響も大きいと考えられます。一方、食事で摂取する炭水化物はデンプンに分解され、ブドウ糖になってから血液中に吸収されます。消化に時間がかかるので、糖の吸収が比較的スローになります。したがって、血糖コントロールをしやすい糖尿病患者にはやさしい糖吸収の仕方だといえます。
しかし、それはそれ、摂取カロリーが結果的にオーバーしなければ実際には大きな影響はありません。したがって、甘いものを食べた分、食事を減らせばOKということになります。つまり、甘いものを口にしてはいけないということはありません。
食事療法に焦りは禁物
食事療法を続けるのは、案外、困難です。したがって、まず最初はカロリー摂取をなるべく一定に保つ努力をしてみてはいかがでしょうか。
薬物療法を行うにしても、もし毎日の食事が不規則で摂取カロリーもバラバラだとすると、血糖のコントロールは大変難しいものとなってしまいます。血糖を下げる働きのある薬によって、糖尿病なのに逆に低血糖状態を招いてしまうことも考えられます。また、逆に食べ過ぎたときは急激に血糖値が上昇して、取り返しの付かない合併症を引き起こしてしまうことも予想されます。したがって、一定量を規則正しく食べるようにすることが大変重要なのです。
そして、その次のステップとして、カロリー摂取を徐々に抑えていくといったことが必要になってきます。糖尿病の治療にかかわる人は、食事制限の困難を知っていると思いますが、一般の人は意外と軽く考えているようです。患者さんのなかにはケーキが食べたいという人もいます。お付き合いで外食しなくてはならない場合もあり、お酒を飲むこともあります。そういうことを十分に理解したうえで、周りの人は接してあげる必要があります。また、本人も最初から厳しく考える必要はありません。
まずは徐々に、適正な食事量をめざして、体を慣らしていくことが重要です。
まずは正しい食事療法の認識を
急な食事制限を無理強いすることは、必ずしも良くない結果をまねきます。それと同時に、食事療法についての正しい知識を習得していく必要があります。
最も最悪なのは、まったく食事療法の必要性を理解しない、または誤った情報を信じてしまうということです。食事療法を続ける上で最も重要なのは、患者さんの自覚と自制心です。自分の食欲をコントロールすることは簡単なことではなく、それをささえるのは正しい知識と周りのサポートです。少なくとも食事療法がなぜ大切であり、必要なのかが判っていなければ、適切な食事量を維持していくことなどできないはずです。まずは、糖尿病と食事療法に関する十分な知識を学んだ上で治療に望む必要があると思います。
糖尿病は、まぎれもない慢性疾患に分類される疾患の一つです。慢性疾患とは長い時間をかけて気づかれた心身の病のことを示します。したがって、数日で糖尿病を改善させることはできませんし、改善させるような生活習慣を身につけることもなかなか容易ではありません。じっくりと焦らず食事療法などの治療に取り組んでいく必要があるのです。
まず間違いなく食事療法なしに糖尿病は克服できません。この事を理解したうえで、食事療法に取り組んでいただければ栄養士さんからのいろんな食生活上のアドバイスを吸収し、たとえ糖尿病であっても食生活を楽しんで生活していくことも可能です。
食事を楽しむということ
糖尿病の食事療法にカロリー制限が必要なことはいうまでもありません。しかし、実は意外と重要なのがどういうシチュエーションで食事を摂るかということです。人が食事を摂るシチュエーションはいろいろなものが考えられます。たとえば、時間がない状況でかけ込んで食べる立ち食いそば。逆に恋人同士でゆったりと楽しむ大切なデイナー。個室で一人寂しく食べる弁当。職員食堂でのいつもと同じおきまり定食。どのシチュエーションも食事でカロリーを取っていることに変わりはありません。
ところが、食事というのはカロリーを摂取するという本来の目的だけではなく、いかにおいしいものを食べるかが重視されるようになり、特に現代社会では食事場所での会話や雰囲気を楽しむ文化が定着しています。これは当然のことで人間の本能として食事を楽しむために食事の内容と環境をなるべく素敵なものとしようとするからです。
さて、糖尿病だからといってこのような食事を楽しむ行為を奪われたらどうでしょうか。どんな人だって糖尿病の治療が嫌になってしまうに決まっています。ですから、普通の健康な人よりも糖尿病の人ほど食事の質や環境にはこだわっていただきたいのです。
同じものを食べるにしてもなるべく手の込んだもの、また、毎日同じものを食べるのではなく少ない量でも充実感を味わえるようにバラエティーに飛んだメニューを摂っていただきたいと思います。
さまざまな食事療法~油分を避ける~
食事療法の実践方法には、さまざまなものがあります。基本的には、糖尿病で食事療法を行うとしても、食べてはいけないものはありません。総合的に摂取するカロリー量が適切であれば問題ないのです。ただし、カロリーが高いものを摂ってしまうと食べられる量が減ってしまうので、やはりカロリーの高いものは避けたほうが良さそうです。
ご存知、油ものは高カロリー食品ばかりです。油はカロリーの固まりみたいなものですから当然です。食事療法として、油分の多いメニューを避ける方法が結構よく使われます。
この食事療法の方法は簡単そうですが、たとえば外食中心の食生活だと、ほとんどのお店の食事に油が使われているのが実態です。最初からそういったものを避けて頼めるときは良いのですが、付き合いで食事に行くとそうでないときも少なくありません。したがって、そういうときはフライものや天ぷら類は衣をはがして食べる方法があります。
しかし、もっと簡単で有意義なのはなるべく自宅で食事をするように努力することです。外食はもともとカロリーが多めの場合が多く、味付けも濃いのでご飯が進み結果的にたくさん食べてしまうことに繋がります。奥さんがいれば奥さんに頼んで、いなければ自分で作ることもできなくはありません。糖尿病の食事療法を続けるうえでは、薄味の和食が理想ですのでそういったものを家族でゆっくりと味わいながら食べることをオススメします。
さまざまな食事療法~食事に時間をかける~
意外に知られていない、軽く観られている方法としてスローフード、ゆっくりと味わって食べる食事療法というものがあります。これは実はかなりの効果があるといわれています。
食後過血糖というものがあります。糖尿病の人はだいたいこの傾向にあるのですが、特に肥満傾向の人に強く認められ、最近は食後過血糖改善剤という食後過血糖専用のお薬も販売されています。この薬を使うのもよいのですが、最初から食べるときに工夫して時間をかけてゆっくり食べて薬を使わないで済むほうが望ましいことだといえます。これは思いの外、大変効果のある食事療法です。
「忙しい」と言われる人がいると思いますが、実際問題、どんなにゆっくり食べたと言っても、食事のはじめから終わりまでは40分程度です。会社に勤めていても昼休みは一時間程度は与えられていることも多いと思うので、問題ありませんね。
この方法は糖の吸収がゆっくりになるので、インスリン分泌能の低い人にとっても、負担が最小限で済みます。このようにインスリン分泌が自然にできるような食事方法を続けていると、それだけでインスリン分泌能が徐々に回復する場合があります。
また、満腹中は食品の摂取後5分間ほどはタイムラグがあります。したがって、ゆっくり食事をするだけで自然に食事の摂取量がさがることになります。
この人は、糖尿病の食事療法については現在も全く理解できていません。しかしゆっくり食べる事だけは守り続け、現在も同様の血糖コントロールを維持されています。
