レアメタルと市場、価格、投資
レアメタルの市場価格
金や銀、銅や鉄などの多くのベースメタルは世界の主要な商品取引所、たとえばロンドン金属取引所(LME)やシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)、ニューヨーク商品取引所(COMEX)などで日々売買され市場価格の透明性が確保されています。
それに対して、ほとんどのレアメタルはベースメタルに比べればまだまだ流通規模が小さく、公正な市場価格の形成維持が困難となっているため、商品取引所に上場されていません。その代わりとして、経済紙や金属専門雑誌、Webニュースでの流通価格情報が取引の指標として用いられています。したがって、ベースメタルに比べると取引の透明性や即時性、流動性に乏しいと言えるでしょう。
また、レアメタルはさまざまな理由から需給バランスが崩れやすいことも特徴です。その使用用途が限られていることから、たとえばレアメタルに代わる代替技術が開発されると需要が急減する可能性もあり、市場価格も不安定です。しかしながらレアメタルの市場規模は拡大し続けており、ここ4年間で約3倍と言う数字も出ています。その他の市場への影響力も非常に大きなものがあります。
たとえば、日本におけるレアメタルの輸入量は4年サイクルで増減を繰り返しているのに対して、レアメタルの輸入金額を見てみると輸入量とは異なり、増加の一途をたどっています。輸入量そのもののピークが2004年だったのに対して、輸入金額は2005年以降も増加しています。つまり、輸入単価が上昇していることがわかります。
レアメタル価格高騰の要因
ここ数年、レアメタルの国際市場価格の急上昇が相次いでいます。代表的なレアメタルを例に挙げてみると、2002年から2007年までの5年間で, ニッケルは約8倍, ネオジムは約6倍, タングステンは約4.7倍, プラチナは約2.5倍に価格が上昇しました。一番価格上昇が顕著だったのが、2002年から2005年までの3年間に国際市場価格が実に12倍に跳ね上がったインジウムでしょう。現在は、ピーク時の半値ほどに落ち着いています。
BRICsと呼ばれる国々(ブラジル・ロシア・インド・中国)や、南アフリカ、インドネシアなどの経済発展と、レアメタルを必要とする電子機器など生産量が急速に増えて、需要が急カーブを描いて増加していることに対して供給量が伴わず、価格の高騰が相次いで起こっているとみられています。
中でも特に中国の経済成長や、それに伴う内需の増加の影響は大きいと考えられています。
もともとは資源産出国であった中国やロシア、アフリカなどBRICsの国々が路線変更し、自国内の需要を優先するためにレアメタルの生産や輸出に制限をかけ始めたことの影響も非常に大きいです。さらに、レアメタルの価格高騰の背景には、将来の値上がりを狙った投機マネーの流れも無視することはできません。
それまでは、レアメタルの使用用途は限られており、特定の産業でしか用いられなかったり、代替材料があったり、国家レベルでの価格抑制策が功を奏していたりといった面から価格の高騰を抑えてきました。 しかし、レアメタルは2003年ころを1つの転換点として、価格上昇が目立つ鉱種が増え、その上昇率も顕著です。
この急激な価格高騰の背景には、需給のアンバランス化があると考えられています。
レアメタル価格高騰の要因(需要の拡大)
レアメタルの価格高騰の要因として、まず第1に需要の拡大があります。高機能化をはかった新製品の開発が進む中、レアメタルを活用した製品が増加しています。その代表が、フラットパネル型テレビやデジタルカメラ、携帯電話などの電子製品です。こうした電子機器は、製品寿命が構造材などと比べると短く、製品がある程度普及した後も引き続き需要が発生するため、原材料であるレアメタルの消費量も増加していくのです。
さらに、BRICs諸国などの新興国での急速な経済発展に伴って、こうした国や地域でも電気・電子製品の需要は拡大しています。たとえばフラットパネルとデジタルカメラの場合、2007年の時点で海外需要が全体の9割を占めていますが、これも新興国での需要拡大によるものです。
この傾向は継続していき、これからもさらに需要が拡大していくことが予想されています。
構造物や宇宙・軍事産業などと比べれば、小型電子機器のような製品1つ1つに使われるレアメタルの量ははるかに微量です。しかしながら、たとえ微量だとしても、その製品の数が莫大になれば、当然のように消費されるレアメタルの量も多くなるのです。
レアメタル価格高騰の要因(供給増加)
レアメタルの価格高騰の要因として、二番目に供給増加の難しさがあります。一般に、金属資源の需要が供給可能量を超えた場合に、需要と供給のバランスを戻すまでには時間が必要です。
なぜなら、供給を増やすためには、新しい鉱山や、精製のための設備の開発が必要となるからです。そのため、需要の拡大があまりに急速に起こると、供給が間に合わないという事態が起きやすいのが金属資源であるともいえます。金属資源の中でもレアメタルはその特性ゆえに供給を増加させることが特に難しいと言えます。
レアメタルはそもそも可採埋蔵量が少ないか、抽出が難しい金属です。レアメタルの埋蔵が確認されていたり、その可能性がある場合にも、採算がとれるか否かの判断のもと、開発ができないケースもあります。また、レアメタルは単独で生産されず、ベースメタルの副産物として抽出されることが多いことも、供給増加を図ることが難しいことにつながっています。
需要が増えたからといって、それに合わせて供給も増やせばいいとは単純にはいかないのが金属資源、中でもレアメタルであるということができるでしょう。だからこそ、安定供給を図るためには多面的な施策が必要となってくるのです。
レアメタル価格高騰の要因(レアメタル産出国の政策転換)
レアメタルの価格高騰の要因として、三番目にレアメタル産出国の政策転換があります。レアメタルの産出国は非常に限られています。レアメタルそれ自体の偏在性はもちろんのこと、資源国の経済状況や治安状況などにも左右されるため、実際にレアメタルを生産できる国と地域はさらに限られてしまうことになります。
たとえば、日本の備蓄政策の対象となっている7鉱種と、最近になって輸入量が増加しているビスマス・インジウム、レアアースを見てみると、そのうち7鉱種で生産量上位5カ国のシェアが9割を超えているのです。特にレアアースに関しては、その大部分が中国により生産・輸出されている状態です。
そのため、レアメタル産出国のとる資源政策が世界のレアメタル市場や資源供給に大きな影響を与えることになります。この傾向はとくに地球上の埋蔵量の少ない金属資源で顕著にみられています。
レアアースの産出国には新興国が多くなっていますが、近年これらの新興国の経済成長が著しく進んでいることから、それに伴って資源国の国内消費も増加し、今後もさらに消費が拡大することが予想されています。このため、新興国各国は将来の経済発展のためにも自国の資源を保護しておく目的で、輸出の引き締めを行っていると考えることもできます。
レアメタルの市場と問題点
レアメタルが直接あるいは間接的にかかわる市場は、デジタル産業だけを見てみてもレアメタル素材市場、電子材料市場、ディスプレーや半導体、電子部品などの電子デバイス市場、パソコンや携帯電話、フラットテレビ、デジタルカメラ、自動車などの製品市場などがあります。
レアメタル市場そのものは3.3兆円ほどの規模ですが、電子材料は9兆円、電子デバイス47兆円、製品市場に至っては141兆円と大変大きな規模の市場となっています。
つまり、その原料であるレアメタル市場自体の規模はたとえそれほど大きくないながらも、そのレアメタル市場をコントロールすることで、それに付随する莫大な規模の市場をも同時にコントロールすることが可能となってしまうわけです。
さらにこのほかにも、国家プロジェクトとして膨大な額の予算が組まれる軍事・宇宙開発などがあります。タングステンなどを代表に、軍需関係での需要が高いものが多いのもレアメタルが取りざたされる要因の一つと言えるでしょう。
このように、現在の産業におけるレアメタルの存在感は非常に大きなものとなっているのです。危機的状況を回避するためにも、また、無駄な紛争などの火種を産まないためにも、国際的な観点から、世界的に希少価値となっているレアメタルの相場や金額について、国家間での協議を行うことが大きな課題と言えるでしょう。
レアメタルの価格と関連投資
レアメタルが現在の多くの産業にとって必要不可欠な存在となり、近年需要が急激に拡大していることから市場価格も高騰しています。そしてそれに伴って、レアメタルを扱う企業の株価も上昇しています。そのため、レアメタルに関与している会社の株を売買することで、利益を上げようとするレアメタル関連投資が注目されています。
レアメタルに関連している会社とは、たとえば、レアメタルなどの電子材料を扱う専門商社や、レアメタルのリサイクルや再資源化を行っている企業、原料輸入などを手がける商社、資源開発などを行っている企業などがあげられます。
レアメタル市場は、他の資源なとや同じ金属資源であるベースメタルなどの市場と比較して、需給のバランスが崩れやすく、市場が小さいことから投資家の投機や捜査の影響を受けやすい市場であると言えます。そのため、他の資源に比べても急激な価格高騰などが起きやすいという面があります。価格高騰の結果として、需要側が過剰反応して買い増しを推し進めたり、産出国などの思惑なども互いに影響しあうわけです。
そうした市場に投資マネーが大きく流れ込むことで、さらに価格が乱高下しやすいという状況を生んでいるのです。レアメタルは新興国市場のにぎわいとともに、注目されている投資先です。
レアメタルと投資家
レアメタルが使われている製品の需要が増えれば、それに伴ってレアメタルの価格も上昇します。一般的に、ある1つの製品の製造から販売までの流れを考えた場合に、その製品の素材となる原料、その原料をもとに作られた部品、その部品を使って製造された製品、そして製品の販売...という1つの過程があります。
エンドユーザーである消費者が価格決定権を持つ現代社会では、一般的には消費者に近い過程にかかわっている企業ほど儲けが少なくなり、製品の流れの最初の段階に近ければ近いほど儲けが多くなると考えられています。
つまり、製品を作る部品の素材原料の一つであるレアメタルに関わる企業が大きな利益を得ることができるわけです。こうした図式からもわかるように、レアメタルなどの資源・素材に関わる企業の業績は実際に伸びており、また、こうした企業への投資も盛んに行われています。
資源株と言われる株価、特にレアメタル分野の株価の上昇なども注目されています。国内だけではなく、海外、特に資源国のレアメタル関連株に目をつける投資家も多数います。その他、レアメタル関連の投資で最近注目されているものには「レアメタルファンド」と呼ばれる投資商品も登場しています。
日本のレアメタル資源開発
現代の「黒いダイヤ」と呼ばれるレアメタルをめぐる争奪戦は、日増しにヒートアップしています。「レアメタルを握るものは世界を制する」とまで言われるほどです。今まで、日本の鉱山会社は海外に自社の鉱山を持つことは避けてきました。鉱山開発は、ハイリスクハイリターンな「掛け」であり、たとえ鉱脈が見つかったとしても開発にはさらに10年単位の長い時間がかかるものなのです。
限られた時間と、限られた資金の中で、リスクを冒すことを避けるため、今までは海外メジャー企業とのジョイントがメインだったのです。しかし、レアメタルをめぐる状況は変わり、このままでは急成長する中国や、利権を争う世界各国と戦うことはできません。そこで、ここにきて日本の企業も自分たちだけで鉱山の開発や運営を目指して動き出しています。
たとえば日本大手の住友金属鉱山は、オーストリアでの開発に着手しました。国際競争力をつけるためにも、より積極的な戦略が企業にとっても必要な局面となってきているのかもしれません。レアメタル需要の急激な伸びに伴って、新日鉱ホールディングスや住友金属鉱山ななどの資源企業の業績は好調で、大手総合商社も資源企業として注目されています。
日本商社も精力的に世界中で行われている資源の争奪戦に参戦し、海外資源国における権益を取得するため資源探鉱プロジェクトや資源開発事業などに次々と参画しています。日本企業各社は資源業界では世界的にはマイナーですが、資源の輸入にかかわっているのは大手総合商社です。三菱商事や三井物産、新日鉱ホールディングスや住友金属鉱山、伊藤忠商事、住友商事などが、世界の資源会社利益番付に名を連ねています。
レアメタルの市場価格
金や銀、銅や鉄などの多くのベースメタルは世界の主要な商品取引所、たとえばロンドン金属取引所(LME)やシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)、ニューヨーク商品取引所(COMEX)などで日々売買され市場価格の透明性が確保されています。それに対して、ほとんどのレアメタルはベースメタルに比べればまだまだ流通規模が小さく、公正な市場価格の形成維持が困難となっているため、商品取引所に上場されていません。
その代わりとして、経済紙や金属専門雑誌、Webニュースでの流通価格情報が取引の指標として用いられています。したがって、ベースメタルに比べると取引の透明性や即時性、流動性に乏しいと言えるでしょう。
また、レアメタルはさまざまな理由から需給バランスが崩れやすいことも特徴です。その使用用途が限られていることから、たとえばレアメタルに代わる代替技術が開発されると需要が急減する可能性もあり、市場価格も不安定です。しかしながらレアメタルの市場規模は拡大し続けており、ここ4年間で約3倍と言う数字も出ています。その他の市場への影響力も非常に大きなものがあります。
たとえば、日本におけるレアメタルの輸入量は4年サイクルで増減を繰り返しているのに対して、レアメタルの輸入金額を見てみると輸入量とは異なり、増加の一途をたどっています。輸入量そのもののピークが2004年だったのに対して、輸入金額は2005年以降も増加しています。つまり、輸入単価が上昇していることがわかります。
