主なレアメタルの種類と特徴
◆チタン
チタンはレアメタルの中でも、調理器具やゴルフクラブ、歯科医療などに導入されていることもあり、私たちにとって比較的身近な存在です。元素としても、地表近くに存在する元素の中では9番目に多く、利用される量も増加していることから、今後はコモンメタルに加えられる可能性も示唆されています。
チタンの特徴は、軽く、強く、さびない(腐食しにくい)ことです。この特性を生かして、さまざまな製品に加工されています。しかしならが、チタンは加工が難しく、他の金属に比べると使われ始めて歴史が浅い新しい金属です。効率の良い製造方法が研究段階であり、「純度が高い金属チタンを製造する」ということが非常に難しいことが問題となっています。現在は合金や酸化物の研究も進められており、今後その用途は益々広がっていくものと思われます。
チタンが最初に用いられたのは航空宇宙産業でした。空や宇宙では、少しでも重量が軽いことが有利となることから、チタンの特性は有効とされました。また、耐腐食性の面からプラント施設や原子力発電所、建築資材、生活用品など幅広く活用されています。
現状でも、チタンを作るためには高度な技術力が必要で、たとえその最先端技術を駆使したとしても、1トンのチタンを作るために実に100万円以上のコストがかかってしまうのです。そうした状況にあって、日本のチタン製造はトップレベルの技術を持ち、世界シェアの約3割を占めています。原材料となる鉱石はすべて産出国からの輸入に頼り、高い製造コストがかかるにもかかわらず、日本のチタン製造メーカーはその高度な技術力を活かして、高品質なチタンを製造し、海外に輸出しているのです。
◆リチウム
リチウムは、現在膨大な数が製造され消費され続けているモバイル機器への利用が大きく広がりを見せています。リチウムを利用した二次電池としての特性がそれまでの二次電池と比べて優れていることがその理由です。
リチウムの特徴としては、金属の中で最も軽いこと、イオン化傾向が大きいこと、存在量が少ないことがあげられます。空気に触れるとすぐに酸化されてしまうため、合金に用いられたり、還元剤として用いられます。炭酸チリウムはテレビのブラウン管などに利用されるほか、医療用として精神病の治療などに処方されます。
また、リチウムはイオン化傾向が大きいという特徴をもつことから、高い電圧を得られ、同じ容量の電池を作ることを想定した場合にほかの金属を用いるよりも重さを軽減することができることから、リチウム電池としても利用されています。軽くて、大きなエネルギーを得られるという点で、電池に理想的な素材なのです。ノートパソコンなどのモバイル機器用電源として欠かせない存在となっています。
他のレアメタル同様に、産出国は偏在しており、特に南米に多くあり、チリが埋蔵量の約7割、生産量の約4割を占めています。近年ではハイブリッドカーへの採用など、リチウムの需要は増大しています。リチウムほどの大きなイオン化傾向をもつ金属が他にはないことから、特別なレアメタルの1つであり、代替材料を探すことは非常に困難です。
◆クロム
銀白色の金属クロムは、表面が酸化被膜に覆われて不動態を形成するという性質から、さびにくいという特性を持っています。同時に、光沢があり、固いことから、この特性を利用して、「クロムめっき」としてよく用いられています。また、鉄とニッケルとクロムを含む合金はステンレス鋼と呼ばれています。高い耐食性を持つステンレス鋼は、さびを防ぐためのめっきや塗装が不要であり、屋外や湿気のある場所、化学薬品を扱う危惧、厨房設備などでも利用可能です。
また、比較的加工もしやすいことから、車両や各種機械、重工業製品から住居施設、包丁などの台所製品に至るまで、幅広い用途があります。資源としてのクロムは、主に南アフリカに偏在しています。特殊鋼の製造工程の「工程くず」は、ほぼ100%リサイクルされていますが、資源価格に対してリサイクルコストが見合わないことから、単体としてのリサイクルは実施されていません。使用済み製品のうち、クロム系ステンレスに関しては、回収されたもののほぼ全部がリサイクルされています。
ステンレス鋼では、クロム系とニッケル系で代替関係があり、それぞれの価格の変動次第で利用料が変化しています。現在はニッケル価格は相対的に上昇していることから、クロム系のステンレス鋼の利用が増えています。
◆タングステン
タングステンが最も利用されているのは軍需産業であるといっても過言ではありません。タングステンは「重い石」を意味するスウェーデン語を語源としています。その特徴は、熱に強いこと、固いこと、重いことの3つです。
タングステンは融点が約3,400℃とすべての金属の中で最も高く、高温における蒸気圧が小さく、機械的強度が高く、さらにガス放出性が極めて少ないという利点を備えています。タングステン合金や、炭化タングステンは非常に高度が高いことから、切削用工具の原料として利用されます。
また、砲弾、戦車などの強硬な装甲に穴をあけるために設計された砲弾である徹甲弾として用いられています。タングステンは、その産出量の実に8割強を中国が占めています。産業上も軍事上も非常に重要なレアメタルのひとつです。その他、照明関連製品や、OA機器、オーディオ関連の部品、ゴルフクラブのウェイトなど、身近なところにも使用されています。
たとえば、タングステンを原料としたコロナ放電電極は、コピー機やレーザープリンター、ファクシミリ、空気清浄機などに使用されています。インフラなどにも使用されています。
◆ニッケル
1円玉以外の銀色の硬貨の素材としても使われているニッケル。その特徴は、耐食性、強磁性、加工のしやすさです。単独の金属としての用途は少なく、ほとんどはほかの金属との合金や、他の元素との化合物として利用されています。
その一つがステンレスです。ニッケルの約7割がステンレス向けです。その他、合金鋼、磁性材料、電池などにも用いられており、多様な用途があります。また、ニッケルの特性を活かした利用方法として「ニッケルめっき」も有名です。ニッケルめっきは比較的加工しやすいので、複雑な形状の製品でも全面にコーティングした水のです。
食品・科学・薬品などの各種プラント、スペースシャトル、浴槽や流し台などの生活設備、ニッケル電池、燃料電池、硬貨、など、幅広く利用されています。特殊鋼の製造工程の「工程くず」は、ほぼ100%リサイクルされています。また、ステンレス鋼についてもほぼ全部がリサイクルされています。
◆インジウム
今最も注目を浴びているレアメタルの一つであるインジウムは、液晶テレビやプラズマテレビなどのフラット型テレビに必要な透明な導電膜の主材料として使用されています。急速に市場を拡大したフラット型テレビの人気に伴って、インジウムの需要も増大しています。
インジウムは融点が低い金属であり、半田の材料として使われてきました。インジウムは、単独の金属として発掘されるのではなく、亜鉛や鉛、錫を精錬するときの副産物(バイプロ)として得られます。年間約数百トン程度しか生産されない貴重な元素です。リサイクル材として流通する分を合わせても500トン程度と見積もられています。
インジウムの生産技術に関しても、日本のメーカーが高い技術力をもっていて、世界的なシェアの多くを占めています。酸化インジウムスズ(ITO)は、透明で尚且つ電気を通すことができるという点が特徴であり、その最大の用途は透明電導膜の主材料としてです。フラット型テレビだけにとどまらず、パソコンのモニター、太陽電池などにも用いられています。
光の透過率から考えると、インジウムの代替素材は存在しないとも言われる一方、資源面で制約の大きいインジウム系原料の代替材料として酸化亜鉛なども活発に研究されています。
◆プラチナ
宝飾・貴金属として有名なプラチナ(白金)は、その名の通り白い光沢をもつ金属で、単体としての特性は非常に金と似ています。プラチナは化学的に不活性で、他の物質などと反応することがほとんどなく、もっとも安定した金属です。酸やアルカリにも強く、王水(濃塩酸と農硝酸を混合した液体。腐食性が非常に強く、多くの金属を溶かすことができるもの)以外で溶かすことはできません。
触媒としての働きが顕著で、貴金属としての価値が高いことが特徴です。
延性、展性にも富み、加工がしやすい金属でもあります。一般には、装飾品に用いられることで知られるプラチナですが、産業分野で多いのは、触媒としての用途です。プラチナを添加することで、通常では起こりにくい化学反応をスムーズに起こすことを可能にすることから、いろいろな化学反応の触媒としての第一候補となっています。
一番有名なのが自動車の排気ガスを無害化する浄化触媒としての用途です。自動車の排ガス規制は環境保護の観点からますます強化されていくことが予想されているため、プラチナの需要は増大していくでしょう。主な産出国は7以上を南アフリカ共和国、ロシアを加えた2カ国で9割を占めています。身近なところでは、万年筆のペン先などにも使用されています。
将来的需要としては、燃料電池用途が期待されています。燃料電池車は地球環境保護の観点からも今後も拡大していく分野とみられていることから、車一台当たりのプラチナの量の削減や、リサクル率の向上が求められています。
◆モリブデン
語源はギリシャ語の「鉛のようなもの」からくるモリブデンは、アメリカやカナダ、チリなど北南米を主な産出地とする銀白色の金属で、クロム族元素の1つです。モリブデンの生産量のうち約8割が銅の副産物としての生産であるため、銅の生産量の変動によって供給量が左右されます。銅鉱山の事故や、銅の価格変動などによって影響を受けやすいという面があります。
非常に硬い金属で、高温の条件下ではハロゲン元素や酸素と反応しやすいという特徴を持ちます。タングステンに比べると耐熱性に劣るものの、他の金属に比べて蒸気圧が小さく、ガス放出も少ないので、今後も新しい用途が期待されているレアメタルの一つです。
モリブデンの使用用途の7割は鉄鋼需要であり、構造用合金、ステンレス鋼などに用いられています。加えて、石油精製用脱硫触媒としての用途も伸びています。また、最近では、トヨタやGMなどのハイブリッドカーの電子基盤を作るための原料としてm知いられていることでも有名です。さらに、ロケットやミサイルなどの電子基盤にも使われています。
また、モリブデンは私たち人間の体にとっての必須元素であり、造血作用や、体内の銅を排出する作用、尿酸の生成機能などにかかわっています。微生物の窒素固定に関わる酵素(ニトロゲナーゼ)にも深く関与していて、地球上の窒素固定量の7割以上にモリブデンがかかわっているとされています。人体同様に植物にとっても必須元素であることから、肥料にも用いられています。
特殊鋼の製造過程の「工程くず」はほぼ100%リサイクルがされています。
しかしながら、特殊鋼などの製品中のモリブデンの含有量は数%と非常に少ないため、使用済み製品からの単体としてのリサイクルは進んでいません。
◆ゲルマニウム
ゲルマニウムは、元々銀の鉱石である「アルイロダイド」という鉱物から分離・精製されます。ゲルマニウム自体は、青味が買った灰白色のもろい結晶です。ゲルマニウムは、温度が上がると電気が流れるという半導体物質です。
半導体としてのゲルマニウムの性質はトランジスターやダイオードなどにも使用されてきましたが、より安定した化学的性質をもつシリコンという代替原料の登場により、その利用は減少しています。現在は太陽電池や光ファイバー、ペットボトルの原材料などとして使用されています。
ゲルマニウムには、「有機ゲルマニウム」と「無機ゲルマニウム」があります。ネックレスなどの健康をうたう商品や、ゲルマニウム温浴でで身近な存在となったゲルマニウムですが、実はレアメタルの一種なのです。ゲルマニウムブレスレットやゲルマニウムネックレスなどに利用されているのは「無機ゲルマニウム」です。
ゲルマニウムは主にフランスやナミビアなどで産出されています。
◆タンタル
バナジウム族元素のひとつであるタンタルは、同族であるニオブと性質がよく似ていて、単体で分離することが難しい元素です。タンタルは灰色の金属で非常に硬い構造を持ちつつも延性に優れています。高融点で、展性にも富み、かつ耐食性に優れると言った特徴を有し、電解コンデンサー、電子工業用加工品の材料、化学装置材料、、超硬工具、光学レンズなどの幅広い用途で使用されています。
タンタルの化合物質である炭化タンタルはダイヤモンドよりも硬いという性質を持ちます。また、プラチナ同様の耐食性を持つことから、絶縁体としても優れています。世界の埋蔵量の9割以上がオーストラリアにあり、生産量も6割強がオーストラリアが占めています。
タンタルは、昔はフィラメントに使用されていましたが、この用途ではタングステンにほぼ取って代わられています。現在、もっともよく利用されるのがコンデンサです。タンタルコンデンサは他の種類のコンデンサに比べると小型で、漏れ電流が少なく、安定しているとされています。パソコンや携帯電話などの小型電子機器の基盤には多量のタンタルコンデンサが使われています。
タンタルは人体に無害である(人体と反応しない)という利点を持っており、この性質を利用して、人工骨や歯のインプラント治療などにも使用されています。
